12ヶ月点検などの法定点検(定期点検整備)は、道路運送車両法第48条で車の使用者に課された義務です。自家用乗用車の場合、点検をしなかったこと自体に対する罰則の条文はありませんが、義務であることに変わりはなく、整備命令や車検時の記録といった仕組みで実施が促されています。この記事では、条文が何を求めているか、車の種類ごとの点検の時期と項目数、24か月点検と車検の関係、点検整備済ステッカーの扱い、そして整備工場や販売店がお客様へどう案内すればよいかを、国土交通省の資料と法令の本文に沿ってまとめます。
法定点検(定期点検整備)の義務と道路運送車両法第48条
道路運送車両法第48条第1項は、自動車(小型特殊自動車を除く)の使用者に対し、国土交通省令で定める技術上の基準(自動車点検基準)により、決められた期間ごとに自動車を点検しなければならないと定めています。期間は車の種類で3つに分かれます。
- 第1号(3月ごと):自動車運送事業の用に供する自動車、車両総重量8トン以上の自家用自動車など
- 第2号(6月ごと):自家用有償旅客運送に使う自家用自動車、業として有償で貸し渡す自家用自動車(レンタカー)など
- 第3号(1年ごと):上の2つに当たらない自動車(自家用乗用車・軽自動車など)
点検の結果、保安基準に適合しなくなるおそれがある状態や適合しない状態であれば、必要な整備をしなければならないことも同じ条で定められています(第48条第2項で第47条の2第3項を準用)。このほか、第47条の2は日常点検を、第49条は点検整備記録簿への記載を使用者に求めています。国土交通省も「点検整備の実施はユーザーの義務として法令でも規定されています」と案内しています。
法定点検は義務かどうか
法定点検(定期点検整備)は義務です。道路運送車両法第48条第1項が、自動車の使用者に対し、車の種類に応じた期間ごとに自動車点検基準に沿って点検することを求めています。期間は、事業用自動車や車両総重量8トン以上の自家用自動車などが3か月ごと、レンタカーなどが6か月ごと、自家用乗用車や軽自動車などそれ以外の自動車が1年ごとです。点検の結果、保安基準に適合しないおそれがあれば整備する義務もあり、第49条では点検の年月日や結果、整備の概要を点検整備記録簿に記載することも求めています。国土交通省は、点検整備は専門的な知識・技術も要るため、国の認証を受けた整備工場に依頼できると案内しています。
12ヶ月点検と24ヶ月点検の時期と点検項目数
国土交通省は、車種や用途ごとの定期点検の時期と点検項目数を次のように示しています。いわゆるマイカーは、1年ごとに29項目、2年ごとに1年ごとの29項目を含む計60項目です。
| 主な対象自動車(国土交通省の例示) | 定期点検の時期 | 点検項目数 | 走行距離が少ない場合に省略できる項目 |
|---|---|---|---|
| マイカー(自家用乗用車、軽自動車) | 1年ごと/2年ごと | 29項目/60項目 | 11項目/18項目 |
| 中小型トラック(自家用)、レンタカー(乗用車) | 6か月ごと/12か月ごと | 24項目/86項目 | 5項目/7項目 |
| バス、トラック、タクシー(事業用)、大型トラック(自家用)、レンタカー(乗用車以外) | 3か月ごと/12か月ごと | 51項目/101項目 | 16項目/16項目 |
| 二輪自動車 | 1年ごと/2年ごと | 35項目/54項目 | 11項目/11項目 |
省略できる項目は、走行距離が規定以下(マイカーは年間5千キロ、事業用自動車は3か月あたり2千キロなど)で、前回の点検を行っている場合に限られます。定期点検の項目は点検整備記録簿に示されており、自動車メーカーのメンテナンスノートに添付されています。
2021年10月1日からは、車載式故障診断装置(OBD)の診断結果の点検が定期点検の項目に加わりました。原動機、制動装置、ABS、エアバッグ、衝突被害軽減制動制御装置などの電子制御装置に故障がないかを、スキャンツールや識別表示で確かめます。車検で行うOBD検査との違いはOBD検査のガイドで扱っています。
12ヶ月点検の点検項目数と時期
自家用乗用車と軽自動車の12ヶ月点検は29項目、24ヶ月点検は12ヶ月点検の29項目を含む60項目です(国土交通省「点検整備の種類」)。事業用のバス・トラック・タクシーや自家用の大型トラックは3か月ごとに51項目、12か月ごとに101項目、中小型の自家用トラックや乗用のレンタカーは6か月ごとに24項目、12か月ごとに86項目と、使い方の厳しい車ほど間隔が短く項目も多くなります。マイカーで年間走行距離が5千キロ以下、かつ前回の点検を行っている場合は、1年点検で11項目、2年点検で18項目を省略できます。2021年10月1日からはOBD(車載式故障診断装置)の診断結果の点検も定期点検の項目に入っています。
法定点検をしない場合の罰則と整備命令
自家用乗用車について、第48条の定期点検をしなかったこと自体を罰する規定は、道路運送車両法の罰則の章(第106条以下)にはありません。罰則がないことと義務がないことは別の話で、点検をしないまま車が保安基準に適合しない状態になれば、次のような仕組みが働きます。
| 仕組み | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 整備命令 | 第54条第1項 | 地方運輸局長は、保安基準に適合しない(おそれがある)車の使用者に、必要な整備を命じ、運行の方法や経路を制限する指示ができる |
| 使用の停止 | 第54条第2項 | 命令や指示に従わず、保安基準に適合しない状態のままなら、その車の使用を停止できる |
| 点検の勧告 | 第54条第4項 | 劣化や摩耗による不具合で整備を命じる際、記録簿などから定期点検が行われていないとわかれば、点検と整備を勧告できる |
| 整備命令違反の罰則 | 第109条第7号 | 第54条第1項の命令や指示に違反した者は50万円以下の罰金 |
| 使用停止処分違反の罰則 | 第108条第2号 | 第54条第2項の処分に違反した者は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
このほか、車検で点検整備記録簿の提示がない場合や前検査(後整備)で受けた場合は、車検証の備考欄に実施状況が記録されます。保安基準や整備命令全体の考え方は保安基準と不正改造の記事で扱っています。
法定点検をしないと罰則はあるか
自家用乗用車の場合、定期点検をしなかったこと自体に対する罰則は道路運送車両法に定められていません。ただし点検は第48条で使用者の義務とされています。点検を怠って保安基準に適合しない状態になれば、地方運輸局長は第54条第1項により整備を命じ、従わなければ同条第2項で使用を停止できます。整備命令や指示に違反すると第109条で50万円以下の罰金、使用停止処分に違反すると第108条で6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。劣化や摩耗による不具合で整備を命じる際に、記録簿から定期点検をしていないとわかった場合は、第54条第4項により点検の勧告も受けます。罰則がないことを、点検しなくてよい理由にはできません。
事業用自動車の法定点検の扱い
トラックやバス、タクシーなど事業用の車は、マイカーとは扱いが大きく違います。第48条第1項第1号により定期点検は3か月ごと、第47条の2第2項により日常点検は1日1回、運行の開始前に行わなければなりません。
国土交通省は、運送事業者は日常点検や定期点検に加えて、車の構造や使用状況を考慮した定期点検の基準を自ら作り、結果を記録し、必要な整備をしなければならないと案内しています(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条の2、旅客自動車運送事業運輸規則第45条)。一定の台数以上の大型車などを使う使用者には、第50条で整備管理者の選任も求められます。
自動車点検整備推進運動でも、国土交通省は前検査を行った運送事業者(自家用大型貨物自動車の使用者を含む)について定期点検の実施状況を確認し、指導するとしています。事業用車を預かるお店では、3か月点検の時期を車ごとに管理し、記録簿を確実に返すことが取引の前提になります。
事業用自動車の定期点検
事業用自動車の定期点検は、道路運送車両法第48条第1項第1号により3か月ごとで、国土交通省の資料では3か月点検が51項目、12か月点検が101項目です。日常点検も、マイカーが走行距離や運行時の状態から判断した適切な時期でよいのに対し、事業用は第47条の2第2項で1日1回、運行の開始前に行う必要があります。さらに運送事業者は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条の2や旅客自動車運送事業運輸規則第45条により、車の構造や使い方に合わせた独自の点検基準を作って記録を残すことが求められます。国土交通省は前検査を行った事業者の定期点検の実施状況を確認し、指導する方針を示しています。
24ヶ月点検と車検の違い、前検査(後整備)の扱い
お客様がいちばん混同しやすいのが、車検と24か月点検の関係です。国土交通省は、車検は検査の時点で安全・環境基準に適合しているかを国が必要最小限確かめるもので、有効期間内の安全を保証するものではないと説明し、車検に合格したことをもって点検整備を省略できるものではないとしています。
| 車検(継続検査) | 24か月点検(定期点検整備) | |
|---|---|---|
| 根拠 | 道路運送車両法第62条 | 道路運送車両法第48条 |
| 性格 | 検査の時点で保安基準に適合しているかを国が確かめる | 使用者が部品の劣化や摩耗を点検し、必要な整備をする |
| 行う人 | 国(自動車技術総合機構・軽自動車検査協会)、または指定整備工場の自動車検査員 | 使用者(整備工場に依頼できる) |
| 怠った場合 | 有効な車検証のない車の運行は第108条で6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 直接の罰則はないが、整備命令や車検証備考欄への記録の対象になる |
整備工場に車検を頼むと24か月点検と車検を同時に行うのが一般的ですが、ユーザー車検などで点検を車検の後に回す「前検査(後整備)」も法令上は認められています。国土交通省は、前検査で受けたユーザーに車検後の点検の実施を確かめるアンケートはがきを送り、2014年2月(軽自動車は2015年1月)から車検証の備考欄に点検整備の実施状況を記録しています。2020年4月1日からは、前検査の車の検査標章裏面に法定点検の注意喚起文も載ります。ユーザー車検の流れはユーザー車検の記事、車検を受けられる時期は車検はいつから受けられるかの記事を参照してください。
24ヶ月点検と車検の違い
車検(継続検査)は、検査の時点で車が保安基準に適合しているかを国が確かめる手続きで、道路運送車両法第62条に基づきます。24ヶ月点検は、使用者が部品の劣化や摩耗を点検して必要な整備をする定期点検整備で、根拠は第48条です。国土交通省は、車検は有効期間内の安全を保証するものではなく、車検に合格しても点検整備は省略できないと説明しています。点検を車検の後に回す前検査(後整備)は法令上可能ですが、2014年2月(軽自動車は2015年1月)から車検証の備考欄に点検の実施状況が記録され、2020年4月1日からは検査標章裏面に注意喚起文が載ります。
点検整備済ステッカーと点検整備記録簿
定期点検を整備工場で受けると、フロントガラスに点検整備済ステッカーが貼られるのが一般的です。表に次回の点検時期が示されるため、お客様にとっては次の入庫の目安になります。
近畿運輸局が2025年8月29日に公表した自動車点検整備推進運動の実施要領では、街頭検査などで点検整備済ステッカーや車検証備考欄、検査標章裏面の点検実施状況の情報を使って定期点検の未実施を指導すること、期日の過ぎた点検整備済ステッカーは保安基準不適合となる可能性があるため剥がすよう指示することが書かれています。点検のたびに古いステッカーを貼り替える、点検を受けていない車のステッカーは剥がすよう伝える、という扱いを受付の決まりにしておくと安心です。
点検整備記録簿は、第49条で車に備え置き、点検や整備をしたら遅滞なく記載することが求められています。国土交通省の案内では、保存期間は3か月・6か月点検の対象車が1年、1年点検の対象車が2年です。記録簿の書き方や記号は点検整備記録簿の書き方で詳しく扱っています。
点検整備済ステッカーの扱い
点検整備済ステッカーは、定期点検を受けた車のフロントガラスに貼り、次回の点検時期を示すものです。近畿運輸局の2025年8月29日の発表(自動車点検整備推進運動の実施要領)では、点検整備済ステッカーや車検証備考欄、検査標章裏面の点検実施状況を使って定期点検の未実施を指導し、期日の過ぎたステッカーは保安基準不適合となる可能性があるため剥がすよう指示するとしています。お店では、点検のたびに貼り替え、期限切れのまま入庫した車にはその場で剥がすことを勧めます。点検整備記録簿は道路運送車両法第49条で車に備え置くもので、1年点検の対象車は2年間の保存が求められます。
整備工場の法定点検の案内方法
「罰則がないなら受けなくていいのでは」と聞かれたときは、義務であること、整備命令や車検時の記録の仕組みがあること、そして点検で見つけた劣化を早く直せば費用が小さく済むことを、順に伝えるのが自然です。押し付けるより、事実を並べて選んでもらうほうが入庫につながります。
- 義務の根拠を一言で伝える:道路運送車両法第48条で、マイカーは1年ごとの点検が使用者の義務と定められている
- 罰則の有無を正直に伝える:自家用車は点検しなかったこと自体の罰則はないが、不具合が出れば整備命令の対象になる
- 車検との違いを伝える:車検は検査の時点の確認で、次の車検までの安全は点検で保つもの
- 時期を具体的に示す:車検から1年後の月を12ヶ月点検の月として、案内の日付を先に決める
- 記録が残ることを伝える:記録簿は車に備え置き、次の車検でも提示を求められる
国土交通省などが毎年9月と10月を強化月間として行う自動車点検整備推進運動(1994年度から実施)にあわせて案内を出すのも一つの方法です。案内ハガキの作成や発送を外に任せたい場合は、車検・点検案内ハガキの発送代行も使えます。
お客様への12ヶ月点検の案内のしかた
12ヶ月点検の案内では、道路運送車両法第48条で使用者の義務とされていること、自家用車は点検しなかったこと自体の罰則はないが不具合が出れば整備命令の対象になること、車検は検査時点の確認にとどまることの3点を、順に伝えると納得を得やすくなります。時期は車検から1年後の月を目安にし、案内日を台帳で先に決めておきます。国土交通省などは毎年9月と10月を自動車点検整備推進運動の強化月間としており、1994年度から続くこの運動にあわせて案内を出すのも一つの方法です。前検査で車検を受けたお客様には、車検証の備考欄に記録が残ることも添えて、後整備の入庫日を決めてもらいます。
車検と点検の時期が車ごとにずれていくと、紙の台帳では案内漏れが出やすくなります。顧客と車両の台帳(車検満了日・ナンバー・点検の実施日と次回予定)を業務システムで持っておくと、12ヶ月点検の対象車を月ごとに抽出できます。点検の記録から次回案内までを一つにまとめたい場合は、整備システム・整備ソフト DREAM POWERのような自動車整備システムも検討できます。
よくある質問
- 12ヶ月点検を受けないと罰金はありますか。
- 自家用乗用車の場合、点検を受けなかったこと自体に対する罰則は道路運送車両法にありません。ただし点検は第48条で使用者の義務です。不具合で整備命令を受けて従わなかった場合は、第109条で50万円以下の罰金の対象になります。
- 新車でも1年目の12ヶ月点検は必要ですか。
- 必要です。自家用乗用車は初回の車検の有効期間が3年ですが、定期点検は第48条第1項第3号により1年ごとです。
- 車検を受けたので24ヶ月点検は不要ですか。
- 不要にはなりません。国土交通省は、車検に合格したことをもって点検整備を省略できるものではないと説明しています。整備工場の車検では24ヶ月点検をあわせて行うのが一般的です。
- 法定点検は自分で行ってもよいですか。
- 行えます。点検は使用者の義務で、自分でできない項目は整備工場に依頼します。行った点検の内容は点検整備記録簿に記載します。
- 自動車整備システムで12ヶ月点検の案内を楽にできますか。
- 車検満了日と点検の実施日を台帳に持てる自動車整備システムなら、対象車の抽出や案内状の作成を短くできます。整備システム リースなしの製品も含めて、点検の次回予定を自動で計算できるかを比べておくとよいでしょう。
出典・参考資料
- 道路運送車両法 第47条の2・第48条・第49条・第54条・第108条・第109条(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185 - 点検整備の種類(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t1/t1-2/ - 点検整備の必要性(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t1/t1-1/ - 点検整備制度と車種の関係(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/000012376.pdf - 車検時の点検整備実施状況のお知らせ(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t3/t3-3/ - 自動車点検整備推進運動(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t3/t3-1/ - 9月・10月は「自動車点検整備推進運動」の強化月間です(国土交通省 近畿運輸局 2025年8月29日)
https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000357213.pdf
記載内容は2026年10月7日時点で公表資料を確認したものです。手数料・税額・様式は改定されることがあるため、申請前に所管の運輸支局・軽自動車検査協会・警察署・都道府県税事務所でご確認ください。







